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舞うが如く 第四章 7~9

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 ほどなく、近藤と土方が先に立ち、
遅れて沖田があらわれました。
正座をした近藤が、眼光鋭く山南の真近にその顔を寄せます。


 「奥の座敷にて、あらためての吟味をいたす。
 衣服を改め、じきに参るがよかろう。
 支度は当方にて、あらかじめ用意してござるゆえ、
 身支度を整えておいで願いたし。」


 近藤の真顔を見つめ返した山南が
唇を真一文字にひきしめたあと、深く頷き返します。
一呼吸おいた近藤が、くるりと踵をかえすと座敷を後にしました。
一人残された山南が、埃のついた旅支度を脱ぎはじめました。


 綺麗に折りたたまれた白装束に、身をあらためて
新調された正装に手を伸ばします。
やがて、黒羽ふたえの紋付に身をあらためた山南が、
一同が待つ奥座敷へと、廊下を踏みしめながら向かいました。


 正面に近藤が座り、その右には土方が陣どって、
沖田は、少し後方に控えていました。
伊籐と永倉はその反対側に控えて座り、以下新撰組の幹部たちが
ひととおり、緊張した面持ちで居並んでいます。
土方が、まず尋ねました。


 「山南殿、なにか言い置きたいことが、
 有るや、否や。」


 「ござらぬ。」


 土方が近藤を仰ぎ見ます。
すこしの間をおいてから
やがて近藤が、低い声を発しました。


 「わが新選組の法令、法度には、、
 脱走を禁じ、犯す者は切腹を命ずると規定してある。
 幹部と言えども、法は法。
 山南氏のこの度の脱走についても、法文のとおり
 この場にての、切腹を申し付ける。
 一同、異議はござらぬであろう。」


 予期したこととはいえ、
やはりという失意の空気が、
ひとときの間だけ、室内の空気を揺らしました。
近藤に向かって深く一礼を終えたあと、
顔をあげた山南が、静かに口をひらきます。



 「切腹を命ぜられて、ありがたき幸せに存じまする。」