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舞うが如く 第四章 4~6

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舞うが如く 第四章
(6)今生の別れ


 三条大橋から歩き始めた沖田は、一言も口をひらきません。
腕を組んだまま、ただひたすらに足だけを運び続けます
数歩遅れて歩く琴もまた、
沖田の心中を図ってあえて言葉をかけません。


 やがて京都から一つ目の宿場・大津に到着しました。
大津までは半日足らずの道のりですので、
たいていの旅人達はもうひとつ先の、
草津宿まで足をのばします。




 琵琶湖湖面のひろがりを横に見ながら
流れ出る瀬田川に沿って、街道は南にむかって下ります。
橋が見えてこるころになると、その対岸には草津宿が見え隠れします。
橋のたもとに、腕を組む一人の旅姿の武士が見えました。



山南敬助です。


 気配に気づいて山南が振り返りました。
静かに腕を解くと、沖田と目線を交わします。



 「江戸まで行くと、手紙にあったようですが。」



 総司が両手を袖に隠したままで、山南に声をかけました。


 「死に場所を求めるとあらば、
 ここの大津でも江戸でも、同じ結果であろうと思う。
 追手は、ふたりだけか?」


 「近藤さんと、歳さんも、
 ともにお帰りを待っておるとの、
 言質を、いただいてはまいりましたが・・・」


 「戻れば、新撰組の法度が待っておろう。 
 かといって、あてもないままに
 江戸に向かっても詮ないことである。
 大志の消えた今、
 どこに果てても、同じ事。
 総司に斬られるのであれば、わしは本望だ。
 ここで、切り捨てても良いのだぞ、
 総司。」

 「私は、剣を抜きませぬ。」