舞うが如く 第四章 4~6
「近藤さんや土方さんは、幕府への執着が強すぎる。
いまのままでは、新撰組は、
幕府の弾圧組織になりさがってしまうばかりです。
役目と言えば、勤皇の志士たちを追いまわすことばかりである。
これでは攘夷どころか、尊王思想まで怪しくなってきた。」
「山南さん、
尊王思想のあなたに局長職は重すぎるでしょう、
今なら遅くはない、新撰組を離れたらどうですか?」
「脱走は重罪です、
幹部と言えども死罪です。
総司や、中沢氏(琴)を裏切ることはできません。」
「そうですか・・・
すでに新撰組に、あなたの思想の生きる場所が無いように思えます。、
私の思いすごしであれば良いのですが。」
心配そうな伊東甲子太郎が、もう一度
山南敬助の横顔を、そっと覗き込みました。
黙ったまま腕を組み、瞑想に沈む山南敬助の様子に
伊東には次の言葉が見つかりませんでした。
作品名:舞うが如く 第四章 4~6 作家名:落合順平