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舞うが如く 第四章 1~3

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 この直後、21日に孝明天皇が長州追討令を出し、
これを受けた幕府は、西国諸藩に号令を出し
15万人規模の長州征討軍を編成しました。
第一次長州征討のはじまりです。



 体調を崩した沖田は、この戦闘には参加していません
すさまじい火災の中、琴と共に壬生の屯所の警護に残りました。
もうひとり山南も、体調がすぐれないために、
残された隊士たちを率いて
屯所の警護と警戒の指揮をとっています。


 濛々と立ちあがる黒煙と、飛び散る火の粉を遠くに見ながら、
頬のこけた沖田が、柱にもたれかかりながら茫然と立ち続けていました。
どこまでも蒸し暑く、吹きつける熱風が髪を焦がすようです

 「総司さん。すこし、横になられたほうが・・・」


 素直にうなずいた沖田が、用意された布団に膝を崩して座りました。
琴が背中から薄い夜着をかけます。
屯所内を見回り中の山南が、隊士を連れて現れました。


 「総司、心配はない。
 火の勢いは、東から南にかけてのもので、
 こちらにはまいるまい。」


 「たいそうな火の勢いです。
 戦局も気にかかりますが、
 九条に出陣した近藤さんや、歳さんたちは無事でしょうか、
 まるごと京都を焼き尽くすような火の回り様です。」

 
 「一時は長州藩が、
 御所の内部にまでなだれ込んだそうだが、
 薩摩藩の介入で形勢が逆転したようだ、
 今は、洛内のあちこちで小競り合いが続いている
 程度だそうだ。」

 「近藤さんや、歳さんは・・・」

 「九条河原に布陣したままと聞いておる、
 戦況については、
 まだ何の連絡もない。」

 「政局のたびに、
 京都は焼ける街ですね。
 ずいぶんと沢山の人たちが難儀に合われているかと思うと
 胸がいたみます。」
 
 琴の一言に、いあわせた一同が
一様に燃え上がる夜空を見あげました。
激しい炎には、まったく収まる気配は見えません。


 「焼けた跡に、甦る物とは一体何でしょう
 京都は焼けるたびに、
 新しい歴史を生み出してきたと聞いておりますが、
 あたらしいものとは何でしょう。
 朝廷と幕府がともに手を取りあった
あたらしい世の中のことでしょうか、
 それとも・・・。」

 時代が変わろうとする予感は感じつつも、
ともに明日が見えないことは、
居合わせたすべての人々に共通する、心境でした。
徳川幕府の崩壊・大政奉還まで、
残された時間はあとわずかに3年です。