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舞うが如く 第四章 1~3

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 しかし、佐幕派によって慶喜の入閣が実現しそうになると
それを阻止しようとする討幕派との間に、激しい対立が巻き起こり、
鳥羽・伏見では旧幕府軍と新政府軍(官軍)が激突をします。


欧米各国が提供した大砲などの新兵器に、
旧幕府軍は、無残に撃退されてしまいます。
慶喜は降伏を決め、勝海舟と西郷隆盛の会談により
江戸城が無血開城されました。
 その後も上野の彰義隊や、会津藩や長岡藩、蝦夷五稜郭などで
官軍に対する激しい抵抗が行われたましたが、
それらもすべて鎮圧されてしまいます。


 こうした一連の戦争は戊辰戦争と呼ばれ、
多くの犠牲を払ったのちに終結し、
1868年、明治維新を迎えることになるのです。
 しかし本編はまだ、元治元年6月半ばのことで、
新撰組による池田屋騒動を伝え聞いた長州藩が、
兵力を挙げて、京へ進軍を始めるために躍起になっている
まさにその最中でのことでした。



 池田屋の二階で吐血した沖田総司は、
八木邸の奥座敷で養生中です。
明け放した座敷の中では、
浴衣姿の琴が、沖田を団扇を煽いでいました。

 縁側に風呂敷包みを抱えた、山南が現れました。
起き上がろうとする沖田を制して、
山南が琴を手招きします。


 「明里より、預かってまいりました。
 京都の夏は蒸し暑い故、
 浴衣は何枚あっても邪魔にはならぬそうです。
 普段、明里が身につけているものではありますが、
 お役にたてばと、預かってまいりました。」


 「助かりまする、
 お内儀さんから借りた一枚だけでは、
 確かに、どうにもなりませぬ。
 明里さんに、よろしくお伝えください、
 兎に角、蒸しまする」

 「余り長居しても無粋ゆえ、これにて失礼いたします。
 総司をよろしく、」


 引きとめる間もなく、
山南が木戸へと消えて行ってしまいます。
見送る琴の耳に、奥座敷からの
総司の乾いた咳が聞こえてきました。