トラストストーリー
遥斗は何も言わずただ視線を自分に縋り付いて離れない椎名へと向ける。
「・・・なるほど、詳しくは分からないが・・・困っていることは確かなようだな」
桜花はすっと小学生ほどしかない椎名を持ち上げて遥斗から離す。掴むものがなくなった椎名の手は空を切る。
しかし、それでも離れたくないと椎名は手を動かすことを止めない。
「椎名姫。遥斗殿にも仕事があるのです。あまり邪魔をしてはいけません」
「嫌だよ!だって遥斗、死んじゃうかもしれないんだよ!そんなの嫌だよ!もう会えないなんて嫌だよ!」
「・・・死ぬ?」
椎名の言葉に桜花が首を傾げる。そして、視線を椎名から遥斗へと向ける。
「どういうことだ?」
「・・・あぁ、そのことね・・・後で説明するから・・・取り敢えず・・・頼んでいいですかね?」
「・・・分かった。後で部屋に行く」
桜花はそういうと椎名を持ち上げたまま遥斗から遠ざかっていく。その間もずっと椎名の泣き声は響いていた。
「・・・さようならだ、椎名様」
呟き、遥斗は自分の部屋へと向かった。