クロエのチョコレイト
超展開による逃走の終焉
真人とともに黒江は逃走してなんだかんだで4分が経過。
あと3分でカレンのアレな薬の効果は切れる。
なんとかなりそうだと黒江は胸をなでおろした、
が、たどり着いたのは行き止まり、ドアがあるが、鍵が掛かっている。
「へ、どうしよう真人! このドア開かないよ!」
「任せろっ! こういう時の風紀アイテムだ!」
真人はポケットからなにやら細い針金を2つ取り出し、鍵穴の中にいれ……
ガチャリ、ドアが開いてしまった。
「必殺! 風紀鍵開けだっ!」
またもや自信満々に胸を張っていう真人に向かって、黒江は思わず全力で突っ込んでいた。
「風紀委員がピッキングするなぁぁぁあああああ!!」
その声は学校全体に響き渡り、色魔化したクラスメイト及び先生にも届いてしまっていた。
地響きとともに、彼らが迫ってくる音がする。残り時間を確認すると、あと、1分!
マズイ! このままだとぎりぎりアウトになってしまう!
動揺している黒江の腕をとり、真人はドアの向こうに突っぱねてドアを閉めた。
「残りあと1分。俺がここで死守する」
黒江は慌ててドアを開けようとするが、ドアは開かない。真人がドアを押さえつけていた。
「なに考えてるのよ! 皆は今我を失っているのよ!? あの人数とやり合って無事ですむと思ってるの?!」
ドアの向こうで、真人が笑う声が聞こえ、黒江は余計焦った。まさかヤケになったのではないのか。
「バカヤロウ。俺を誰だと思ってる。俺は天下の風紀委員長。東条真人だぞ? 女のひとりや二人、守
れないでなにが風紀委員長だ。いいからお前はそこで待っていろ」
狂人と化したクラスメイトたちの怒号が近づく。
ドアは固く閉じられている。クラスメイトたちの怒号で大気が揺れる。今逃げないと、大変な事になる。
「は、早くこのドアを開けなさい! 格好つけてるんじゃないわよ!」
今までのおちゃらけていた声から一転して、真人はぼそっと真面目な声で、確かにこう言った。
「格好つけさせろよ。好きな女の前でくらいな」
その後、ぅオラァ!! という掛け声とともに、真人がクラスメイトたちの中に飛び込んでいった音が聞こえ、まるで交通事故のような衝突音が鳴り響いた。
黒江は、あまりの超展開すぎる告白に、硬着せざるをえなかった。
作品名:クロエのチョコレイト 作家名:伊織千景