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クロエのチョコレイト

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クロエオンザラン



黒江はギクっとした表情でこわばった。

「ま、まさか瞳子さん、誰かにチョコレイトをあげたりなんかしないデスよね?」

「そ、そんなことないわよ!」

カレンは急に鼻をスンスンと鳴らし、黒江のにおいを嗅ぎはじめた。
そしてまたも仰天の表情を浮かべた。

「ちょ、ちょちょ、チョコレイトの匂いがするッ! やっぱり! 誰かにチョコレイトをあげるんデスね!」

このカレンの絶叫を聞き、
クラス中の男子および
女子および
ちょうど入ってきた担任の先生の視線が黒江に集まった。
緊張感のあふれる沈黙が流れる。
しかし、この状況は、何かの甘い香りによって一変することになった。
クラスのあちこちで、何か熱に浮かされたかのような声が聞こえる。
そして、クラスの男子女子および担任の先生の顔が真っ赤になり、熱烈な視線が黒江に向けられた。

「ちょ、ちょっと皆、どうしたの?」

何かを察したカレンは、黒江の腕をつかみ、教室を飛び出した。

「へ、なに? カレンどうしたの?」

「やばいデス」

走りながら、顔面蒼白になりながらカレンは言う。
直後、飛び出した教室からクラスの男子女子および担任の先生が塊になって2人を追いかけてきた。

「ちょっ! ど、どういうことよカレン!」
その光景に動揺した黒江は、カレンに問い詰める。カレンは、

「えーと、先ほどのお薬のせいだと思いマス」
と目を泳がせながら言った。

「あ、あんたの薬でしょッ?! 何とかならないの?!!」

「スイマセン。効果が切れるまで逃げるしかないデス」

「捕まったらどうなるのよ?!」

「貞操の危機デスね」

「そんなモン学校に持ってくるなぁーー!!」

黒江はカレンを太陽系の外までぶっ飛ばしたい衝動に駆られながらも、
立ち止まることができないのでぐっと抑えた。

「対象は瞳子さんだけなノデ、 私が足止めしマス! 薬の効果は15分で切れるので逃げ切ってくだサイ!」

カレンは踵を返してクラス一同の塊の前に立ち、ポケットから取り出した小瓶を地面に叩きつけた。

「必殺! シビレ煙玉っ! って、ガスマスク忘れたあぁああ!」

小瓶から出てきた謎の煙を嗅いで、クラスメイト及び先生はバタバタと倒れ込んだ。
そしてカレン自身も例外なく倒れ込んだ。いわゆるひとつの自爆である。
黒江はカレンを助けようと思ったが、
よくよく考えてみたらカレンがまいた種であることに気がつき、放置することにした。

作品名:クロエのチョコレイト 作家名:伊織千景