銀の糸
原口が逢いたいと思った細面の顔だった。
「わざわざすみませんでした。散らかっていますがどうぞ」
狭い家であった。
ミシンのすぐわきに案内された。
「早く出来て嬉しいです」
「これでいかがですか」
原口は出来上がった型紙を見せた。
「こんなに丁寧な型紙見たこと無い」
確かにそうかも知れない。刺繍の型紙は輪郭が解れば良かった。
原口は捺染の型紙の彫り方であった。
「おいくらになりますか」
「一万でいいです」
「三万円の支払いします」
「働いていますから、彫っただけで満足です」
「無理にお願いしたのですから・・・」
五月女は三万円を原口の手を掴んで渡した。
手を握られた原口はその驚きで札を握っていた。
「ではこうして下さい。このお金で食事をするって」
「それでは何にもなりませんわ」
「使い道ないんです。一人者で・・・」
「私も一人者、お見合いしましょうか」
五月女は笑いながらそんな事を言った。