銀の糸
意外に早く型紙が出来たことに五月女は嬉しく思った。
「直ぐにタクシーで伺います。代金はいかほどでしょうか」
「タクシー代がもったいないから迎えに行きましょう。いや、お届けします」
「ありがたいです。住所はみどり町5番地です」
原口の車にはカーナビが付いていた。
10分ほどで着いたが、車を止める所が無い。
少し走って公園に止めた。
型紙を持ち五月女の家に向かって歩いた。
小さな川が流れていた。
その水音のように懐かしいミシンの音が聞こえて来た。
古い建物とすぐに解る。
家の周りが杉の板を重ねた造りであった。
しばらく見た事も無かったように感じた。
「ごめんください」
一度では聞こえなかった。
大きな声でもう一度怒鳴るように言った。
ミシンの音が止んで
「は~い」
と高い声が聞こえた。