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2006-2010 詩集Ⅰ『あさ』

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追憶の章


19.

ある春の日 突然出会った
私の家をふらりと訪れて

私の写真を見てくれた
「綺麗だね」と、「ありがとう」と。

それからも顔を覗かせては
ぽつりぽつりとお喋りをした
言葉は数や量じゃない
心なのだと思いながら


あれからどれほど経ったろう
いつしか
あなたは見えなくなってしまった


もう淋しさから解放されたのかしら?

それとも何か幻滅させてしまったかしら

私なんかで役に立てたのかしら

私の言葉は栄養になれたのかしら


「ありがとう」と言いたいのは私のほうなのに

もし ちょっとでも
何かあたたかいものを渡せていたのならいいな

道で擦れ違っているかもしれない
今もどこかで見てくれているのかもしれない

だから

私はここで私のまま立っている
あなたの面影を見失わないように


いなくなってしまったあなたへ


『September 05, 2006 -- あなたへ』