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舞うが如く 第三章 10~12

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 「どれ、一献。」

 沖田が二合徳利に手を延ばします。
盃に受けた琴がそそがれた酒にためらいも見せず、
軽く一口に飲み干しまいます。
もう一つどうだと勧めると、遠慮することもなく、
その二口目も、いとも簡単に飲み干してしまいます。
沖田と山南が顔を見合わせていると、「もう、終わりでしょうか」と、
琴が盃を逆さにして、軽く振って見せました。


 「なかなかである。またしても、一本取られたのう。」


 沖田が、笑いながらその盃を受け取りました。
琴が徳利を手にして沖田に注ごうとしたその一瞬に、
上座が一斉に立ち上がりました。
色白で目が小さく、でっぷりと太った芹沢が、鉄扇を振りかざしながら
いつもの様に、そのだみ声を張りあげました。




 「諸君、今宵は無礼講につき、心おきなく飲み明かしてくれたまえ、
 邪魔な幹部諸氏は早々に引き揚げる故、後は存分に呑みたまえ!
 近藤君、土方くん、引き上げじゃ、引き上げ!
 あぁあ、諸君はそのまま、そのまま。
 席に着いたままで結構。
 結構、結構にござる。」


 上機嫌の芹沢が、
芸妓達にとり囲まれながら、よろめくように廊下へ出ます
後に従う土方から、一瞬の鋭い視線が沖田のところへ届きました。
隣からは山南も顔を寄せてきて、
沖田と共に、その合図へわずかな反応を返します。



 やがて沖田も、琴を促して立ち上がりました。
酒と女たちで大喧騒の大広間から一歩出ると、
廊下には、いつも以上に薄暗い闇が広がっていました。
窓に目をやると、真黒の雲が空を覆いつくしいます。
すでに大粒の雨が、音を立てて降り注いでいました。