別れの殺意
殺意
達也は大家を呼び出した。
「金の用意が出来た。明日振りこむよ。別れる前にドライブに行こう。君の車で行きたいな」
「いいわよ」
「見晴らしの良い山があるからそこに行こう。行きは僕が運転する」
「どこでもいいわ」
達也はなだらかな山道を登った。
後5日で大みそかである。夏場は観光地であったが、この季節では車も通らない。
昼間でも杉の木に覆われ、ライトをつけるほどの明るさであった。
頂上に着くと富士山も見えた。
「ホント、見晴らしがいいわね」
達也は煙草に火を点けようとした。
「乾燥しているからよした方がいいわ」
大家の言葉でたばこは火を付けずに捨てた。
「ここから下り坂だから、運転してくれないか」
「いいわよ」
「ガソリンもったいないからエンジン掛けないで下りたほうがいいよ」
「そうか、エコだよね」
「僕は運動不足だからあとから走っていく」
「解ったわ」