短編・『湯西川(ゆにしがわ)』にて 6~9
芸妓とは、
あくまでも芸を売って
座の取持ちを行うのがその勤めです。
しかし、江戸時代以来、芸妓もその他の遊女と同様、
前借金を抱えた年季奉公であり、
過去の花街では、人身売買や売春の温床となっていました。
誰でも構わず身を売ることは「不見転(みずてん)」
として戒められましたが、
第二次世界大戦後までこうした不見転は、
ほぼどこの土地でも見られました。
また、置屋も積極的にこれを勧めることが
多かったようです。
しかし、あくまで芸妓は遊女とは区別され、
一流の芸妓は「芸は売っても体は売らぬ」心意気を持ちました。
決まった旦那にのみ尽くし、
その見返りに金銭が報われるというのが
花街での建前になっていました。
むろん、こうした実態を嫌い、
芸妓は客の自由にならぬものという気概を貫きとおして、
一生涯旦那を持たないという名妓たちも多くいました。
なんの自由も無いと考えられがちである芸妓たちなのですが、
恋愛の自由は、昔からかなり
認められていたようです。
自らの芸によって生活する芸妓は、
明治以降、一種のあこがれの存在としてとらえられることも多くなり、
雑誌で人気投票が行われたり、絵葉書などが好評を博したことも
多々あったようでした。
作品名:短編・『湯西川(ゆにしがわ)』にて 6~9 作家名:落合順平