充溢 第一部 第四話
第4話・2/5
それから、スィーナーは工房から外に出られなかった。
後悔ばかりだ。
馬鹿な事を仕出かしたものだ――姿ばかりは小さな子供だが、自分よりも何倍も年寄りなのだ。
一時の感情に揺さぶられてしまう、無思慮で、自律の出来ない馬鹿な娘と思われたに違いない。
あんなに良くしてもらっているというのに。恩知らずな――そして、こんな失敗はきっと、今後も続くだろう。生きている限り。世界は終わったも同じだった。
鬱々と考えているうちに、反応は終わる。
反応器を放り出したまま寝てしまいたかったが、一つ、身体を動かすと、自動人形のように動くものである。
湯浴中で液体をかき混ぜながら、溶媒を飛ばしていく。ゆっくりと煮詰まる生成物。未反応の薬品と、副生成物に汚れた液体だ。
あるところから、黄色い沈殿が生じ、それが徐々に粉として姿を現す。
「一晩乾燥させてから精製しよう」
濾紙に粉を乗せ終わると、手仕事に紛らわされていた事が、一斉に襲ってきた。
「今晩は、眠れそうにないな」
作品名:充溢 第一部 第四話 作家名: