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舞うが如く 第3章 7~9

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 つい先日にも、
芹沢鴨が、生来の酒乱癖で大暴れをしたばかりです。
鉄扇で器物を叩き潰し、調理場の酒樽を叩き割るなどの狼藉をしたあげく
ついには、七日間の営業停止を言い渡してしまいました。

 その乱暴狼藉への手打ちも兼ねて、
近藤と土方が全隊士に召集をかけました。
とうの芹沢も、すでにその一件を忘れたかのように、
今日も上機嫌で、盃を傾けています。

 しかしこの直前に、同じ水戸藩出身で
芹沢鴨の腹心の一人といわれる、局長の新見錦はすでに、
その責任を問われて、詰め腹で果てたばかりでした。



 新見は、局長の一人という立場にありながら、
遊蕩に耽っては隊務を怠り、隊費と称しては、
民家から強請り(ねだり)を繰り返していました。
 壬生浪士組の頃から、その覇を競い合ってきた芹沢の水戸藩士一派と
近藤の試衛館一派の主導権争いが、日夜続いていたのです。
それが、たび重なる芹沢の乱暴と狼藉、酒色に溺れる旧水戸藩士たちの
醜態で、その形勢に決着がつきかけてきはじめました。



 ※なお、明治になって倒幕派尊王攘夷志士を祀るためつくられた、
霊山護国神社に倒幕派の敵だったはずの新選組幹部である、
新見錦が祀られていることから、切腹は単純な乱暴狼藉ではなく
水戸や長州、土佐などの尊王攘夷派との
親密な関係があったからではないか、
という説もでてきました。※