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舞うが如く 第3章 7~9

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 「沖田様。
 先日の立会いでは、
 手加減をいたされましたね。」

 数歩先を歩く沖田が、振り返るかわりに、
小首をかしげてから、速度を少し緩めました。
細身の沖田ですが、背丈は3寸(約10㎝)ほど琴を上回ります。
急ぎ足の琴が、数間先でやっと沖田と肩を並べました



 「手加減などはしてはおらぬ。
 見事な一本であった。
 やはり、天狗には勝てぬ。」

 「お戯れを。
 あれ以来、浪士や隊士たちの見る目が変わりました。
 男装せずとも良い空気をおつくりになるために、
 わざと勝ちを、譲ったのですね。」


 「さて?
 何の話であろう。
 俺には、関わりの無いことだ、
 おぬしが、男装であれ、おなごのよそおいであれ
 どちらも似合うことに相違がないであろう。
 その、だんだら羽織もなかなかに似合っておるぞ
 なかなかの、美男子ぶりである。
 誰が見ても、誠の似合う、新撰組だ。」



 「脱ぎとうになりました。」


 「怒るな、怒るな、
 膨れた顔も、
 またなんとも可愛いものだ。
 ただし、もう、手加減せぬぞ、
 次には心して、
 まいられたし。」

 「やはり!」


 琴の、厳しい視線をさらりとかわして
沖田が、何事もなかったように島原の東大門をくぐります。
琴がまた少し、急ぎ足になりました。


 この日の酒宴の大きな目的は、
水戸学を学び、天狗党の強烈な尊王攘夷思想の流れをくむ
芹沢とその一味を泥酔させ、酩酊させることに
その本来の狙いがありました。