舞うが如く 第3章 7~9
「どうだ、一手交えるか。」
満面の笑みで、琴が振り返りました。
「可笑しな奴だな。
男子と立ち会うのが、そんなにうれしいことか。
さては、色恋よりも剣に、ぞっこんであるか?」
「琴は、自分より弱い男には、
断じて、惚れませぬ。」
「なるほど、
良之助殿が言う通りにある。
顔に似ず、本性は根っからの
じゃじゃ馬である。」
沖田と琴の登場に、道場が瞬時にざわつきました。
このころになると、「誠」の旗印をひるがえす新撰組の名前も有名となり、
入隊希望者が、連日おとづれるようになりました。
その最初の難関が、毎日行われる道場での腕試しでした。
防具も竹刀も使わない、
木刀を用いた、実戦さながらの稽古です。
特に近藤たち試衛館の流儀は、
相打ちをも辞さないという、実戦主義の剣術でした。
「相手の剣を避けていたのでは、おのずと隙も躊躇も生まれてしまう。
相打ちも辞さず、深く一歩踏み込んでこそ
生きる道も生まれるというものである。」と叱咤をします。
近藤や沖田の、きわめて激しい剣技は、
此処から生まれてくるのです。
作品名:舞うが如く 第3章 7~9 作家名:落合順平