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舞うが如く 第3章 4~6

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 その瞬間、防具をつけた新隊士が床板を激しく踏み鳴らしました。
土方めがけて、大上段からまっこうに木刀を切り降ろします。
下段からせり出された土方の木刀が、相手方の木刀をはじきあげた瞬間に
軌道を変えて、ガラ空きの胴を激しく叩きました。
もんどりうった新隊士が、そのまま道場の壁まで飛んでいきました。



 「めずらしいな、次郎丸。
 わしと代わって稽古をつけてくれないか。
 このところ総司が見当たらぬもので、
 わし一人では、忙しくてかなわん。」


 「いえ、所用が有る故、本日は失礼いたします」


 「そうか、では総司を見かけたら、後で顔を出す様に言ってくれ。
 井上も最前より、探していたようだ。」

 「また、お小言でしょうか?」

 「わしには分からぬ。
 総司に小言が言えるのは、井上くらいなものだ。
 剣はたいしたことはないが、あの口だけは相当なものだ。
 次! かかってまいれっ。」

 一礼をして、苦笑したまま琴が道場を出ます。
八木邸を出て畑道を行くと、
ほどなく総司と姉妹に出あいました。


 「暑いのう。
 これから沢に、涼みに行くところだ、
 一緒にどうだ。」


 「また呑気なことを・・・
 井上様も土方様も、総司はどうしたと
 総司はどうしたと、朝からたいへんに大騒ぎです。
 お首も危のうございます。」

 「ほう、それは難儀なことだ。
 まぁ、おぬしがついておれば俺には千人力だ。
 歳さんも井上さんも口が達者ゆえ、
 近くにいるとどうにも窮屈すぎる。


 この子らと遊んでいたほうが余程、おれの性に合う。」