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舞うが如く 第3章 4~6

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舞うが如く 第三章
(5)盛夏の浅瀬

 文久三年七月。真夏のことです。
浪士組の屯所となった八木邸は珍しく朝から静かでした。


 沖田総司と同室の井上源三郎は、
江戸の小流派である天然理心流同門の先輩で、沖田より十三以上も年上です。
あまり物事に頓着しない総司の面倒を、何かにつけてみてくれているのですが、
小言が始まると長くなるので、総司はいつの間にか
いなくなってしまいます。



 この日も、琴が訪ねた時には部屋に姿が見えません。
井上に声をかけると、新しくできた道場だろうという返事が返ってきます。
新しくできた道場とは、八木邸と隣家との間に
建てられたばかりの建物のことです。


 浪士組から残留した24名に加えて、
将軍家茂の大阪行きの警護以降、徐々に隊士が増えてきました。
稽古はたいへんに厳しいもので、
わずかな防具と木刀での立会いが基本です。

 近藤と芹沢は上座に鎮座したままで、
道場の真ん中では土方が、新しく入った隊士に稽古をつけていました。
木刀を手にした土方は、面も防具も着けないままで、
めずらしく、右手一本でだらりと下げて構えています。



 山南の姿を見つけた琴が、背後から声を掛けました

 「沖田か、今朝は顔を見せないなぁ、
 そう言えば、朝方に例の姉妹が来ていたから、駄菓子屋にでも
 出向いているかも知れないなぁ・・・
 急用か?。」