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表と裏の狭間には 最終話―戻れない日常(中編)―

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「……先日の内乱、その末に独立した新組織『ノヴァ』との決戦が、明日行われる可能性があります。」
室内が、僅かにざわついた。
「静かに!これから詳細を説明します!」
まずは全員を黙らせる。
「まずは、星砂煌より、ノヴァについての解説です。」
「紹介に預かった、星砂煌です。自分のほうより、ノヴァについての説明をさせていただきます。」
煌が、手元のパソコンを操作する。
「最初から説明しますと、ノヴァというのは、先月の内乱の際に独立した新組織です。この内乱は、前アーク北海道支部道北代表、桜沢美雪を中心とする勢力によって引き起こされました。我々は、この一派を、便宜上『桜沢一派』と呼んでおります。以下この呼称で統一いたしますので、ご理解の程を。説明を続けますと、この内乱の目的は、桜沢一派をアークより独立させ、独自の組織を築くことだったと思われます。事実、桜沢一派はアークより独立し、『ノヴァ』を立ち上げるに至っています。」
静まり返った会場に、煌の声だけが響く。
「ノヴァの組織形態についてです。構成人数は、内乱前のアークの約半数。つまり、現在のアークと同規模の組織と言えます。構成員の年齢は、平均二十代半ばから後半と、かなり若くなっております。これは、アークの若年層のほとんどが、桜沢一派についていたのが原因です。桜沢一派は、若い者を中心に、勢力を広げていたものと思われます。」
煌のその言葉を、あたしが引き継ぐ。
「ノヴァの組織形態について、詳しく判明していることは以上です。次に、私のほうから、ノヴァの目的等について説明します。」
また、パソコンを弄る。
「ノヴァの目的は、率直に言って、日本国家に対する反逆です。」
会場が、さっきとは比べ物にならないほどにざわついた。
「静粛に!これより詳細を説明します!えー、ノヴァの最終目的は、現日本政府に対するクーデターだと思われます。ノヴァは、この目的達成のため、我々アークを潰しに来るものと推測されます。」
「更に、ノヴァの背後には、『霧崎組』が存在することが、判明しております。」
煌が引き継いだその言葉に、またも室内がざわつく。
だが、今までのざわつきとは違う。
霧崎組がなんなのか、知らないのだ。
「霧崎組というのは、聖邪鬼組と同義の組織です。聖邪鬼組という組織は、霧崎組の隠れ蓑にして、幻影の組織なのです。これは、つい先日判明いたしました。」
ざわつきが、大きくなった。
混乱しているのだろう。
あたしも、最初に知ったときは混乱した。
「静粛に!聖邪鬼組の正体については、今は問題ではありません。問題なのは、彼らがノヴァのバックについていることです!」
「クーデターというのは、ノヴァの目的というよりは、むしろ霧崎組の目的に近いです。というのも、『ノヴァ』現リーダーである桜沢美雪は、霧崎組組長である、霧崎平志の娘であり、父親の目的に強く同調していると見られるからです。」
ざわめきが、更に強くなった。
………流石に、新情報を開示しすぎたか。
どうしたものかしらねぇ……。

先手を打ったのは、レンだった。
「まあ待て紫苑。」
「待てって……。」
「今は話さなくていいよ。」
「……どういうことだよ?」
「ゆりに言っちゃったからね。『ボクが退院するまでは話さなくていい』って。なのに、君に話を聞いちゃうのは、不公平だろう?」
「だが……!」
「だから、退院するまでだよ。ボクが退院したら、全員ボクの前に正座して、話を聞かせてもらう。きっちりと、あますところなく、ね。」
「………………。」
「君が謝りたい気持ちも分かるけどね。ここは押さえてくれないか?ボクの主義に反するし、それに………。」
「それに?」
「折角二人きりなんだ。そんな暗い話で台無しにするような、無粋な事はしたくないだろ?」
「………お前がそう言うなら。」
うまく言いくるめられた気がする。
まあ、俺がレンに勝てるわけがないんだけど。
「でも、一度くらいは勝ちたいよなぁ………。」
「ん?何に勝つんだい?」
「いや………。お前にはどうしても勝てねぇって話だよ。」
「そりゃそうだろ。勝たせるつもりないし。」
「ねぇのかよ…………。」
げんなりする。
「だってほら、君の事は誰よりもよく分かってるしね。君自身よりも。」
「まあ、そりゃ分かってるが。」
本当に、こいつは俺のことを良く分かっている。
それは、俺が一番良く知っている。
「逆に、君はボク自身よりもボクの事をよく分かってるだろう?」
「まあ、その自負はある。」
だから、こいつが次に何を言い出すのか、大体予想できてしまうんだよなぁ……。
「まあ、君があまりにも心苦しいと言うのなら、ボクが退院した後、何か罰を上げるよ。」
ほらキタ。
しかも、罰を『あげる』と来た。
「って、お前……!」
「ん?申し訳ないんじゃなかったの?」
「………ぐっ。」
あ、俺の人生半ば終わったかも。
これは、大分怒ってるなぁ。
「心配しなくても、そんなに酷い罰を科したりはしないさ。」
「………そうか?」
「うん。そうだねぇ……。ちょっとボクの玩具になってもらうだけだよ。」
「……………。」
これはまた危険な罰ゲーム来たよ………。
だが、ギリギリ想定内だ。
多少遊ばれる程度なら問題ないだろう。
精々が荷物持ちか、パシリくらいで済むはずだ……。
「まあ、ちょっと口に出すと捕まる用途の玩具だけどね。」
俺死んだぁああああああああああああああああああああああああああああ!!!!
あーあ。
社会的に死ぬわ、これ。
「冗談だよ。そんな絶望したような顔しないでくれ。」
「だよなぁ!」
「あははは!本気でそんなことするわけないじゃないか!」
「ははははは!そうだよなぁ!」
二人でケラケラ笑い合う。
俺のほうは、半分必死で。
冗談であってくれなきゃ困る。
「ねぇ、紫苑。」
「何だ?」
「18歳になったらさ、結婚しようよ。」
「いいよ。」
「いや、正式に結婚するのが嫌でも、婚約くらいなら………って、え?」
「だから、構わないよ。」
「………やけにあっさりしてるね。」
「最初からそのつもりだからな、俺は。」
「でも、そんな簡単に返事して、いいのかい?」
「ああ。じゃあ、そうだな。18歳になったときに、問題が発生しないようなら、結婚しよう。」
「…………………うん。」
顔を真っ赤に染めて、そう頷いた。
やべぇ、超可愛い。
「っと、もうこんな時間か。じゃ、俺はそろそろ帰るわ。」
「そうか。ケーキ、おいしかったよ。ありがとう。」
「ああ。また、買ってくるよ。」
「……………約束、だよ?」
「ああ。何がいい?」
「大きなショートケーキがいいな。」
「分かった。」
「………本当に、約束だよ。」
「……。ああ。」
鋭いなぁ、こいつは。
でも、死亡フラグじゃないよね?これ。
「じゃな。」
「うん。」
最後に、ケーキがどのくらい残っているのかを確認する。
そして、プレートの下に、持ってきておいた封筒を忍ばせる。
「じゃ、またな。」
「ああ。またね。」
そして、病室を出て、扉を――
「紫苑!」
――閉めようとしたところで、呼び止められた。
「何だ?」
振り返り、中を覗く。
すると、レンが。
「いってらっしゃい。」