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茶房 クロッカス その4

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「マスター、そろそろ帰りますねっ」
 薫ちゃんがそう声を掛けてきて、どうやらお祝いの会はお開きらしい。
「ああ。じゃあ、お祝い会はもう終わりなんだね。また良かったら寄ってくれよ」
「はい、ありがとう。でもしばらくはこの子の世話で大変かもしれないから、そんなには来れないかも……。でも、検診とかがあるから、その時には寄せてもらいますね!」
「あぁ、新米ママ業も大変だろうけど頑張れっ。気分転換したくなったらいつでも来いよ! 子育ての相談には乗れないけど、愚痴ぐらいなら聞いてやるぞっ」
「ふふっ、なら愚痴が溜まったら来ようかな。じゃあ、お邪魔しました」
 そう言って薫ちゃんは帰り、良くんも重さんも夏季さんも帰って行った。
 京子ちゃんはその後も少しだけ沙耶ちゃんと何やらコソコソ話していた。
 まさか、さっきの話をすることはないだろうけど、俺は気になっていた。
 それから少しして、京子ちゃんも「また来ますね」と言って帰って行った。

 夕方沙耶ちゃんが上がってからもそんなにお客もなかったので、俺は今後のことを一人で色々考えていた。
《今日の沙耶ちゃんの様子では、万が一にも俺が優子の恋人だと分かったとしても大丈夫そうだったが……。あっ、その前に、優子が俺のことを恋人だと思ってくれていればの話だけど……アハハ。そうだ! 今日のことを優子にも報告しとこう。夜にでも電話するか……》
 そう決めると俺の行動は早い。定時になる少し前から店じまいの支度を始め、定時には店を閉めて自転車に跨り、春風に吹かれながら帰宅コースを辿った。
 もちろん気分は良好だ! また優子の声が聞けるし、ちょっとだけ嬉しい報告もできるから……。
 気が付くと、知らず知らず口笛を吹いていたりした。

 家に帰り入浴と食事を済ませると、俺は時間を見計って優子に電話した。
 呼び出し音は鳴っているのになかなか出ない。
 どうしたんだろう、まさかもう寝ちゃったなんてことないよなぁ……。
 時計を見るとまだやっと九時を過ぎたところだ。
 一旦電話を切って、もう一度掛け直してみる。
 呼び出し音を数えてしまう。三、四、五、六……出ないなぁ……。
 九つ数え終わる寸前に音が変わった。そして優子の声と、その後ろには何だか騒音が……。