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茶房 クロッカス その4

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 その後、重さんや夏季さんも含めてみんなで、沙耶ちゃんが買ってきた美味しいケーキを食べた。
 コーヒーや紅茶をみんなに振る舞い、俺はカウンターの中のいつもの席でゆっくりコーヒーを飲んていると、京子ちゃんが紅茶を持ってカウンターに移動してきた。
「ねぇ、マスター。さっきの約束……」
「ん? そうだな……」
 向こうを見ると、みんなはテーブル席で談笑しているので、俺たちが話していてもきっと聞こえはしないだろうと思えた。

「京子ちゃん、やっぱり今でも京平のことを思ってるのかぃ?」
「えぇ。もうそれは、自分でもどうしようもないような気がしてるの」
 ちょっと淋しそうに小首を傾げた。
「そうか……。実は俺、会ったんだよ。ずーーっと想ってた人に……」
「えっ、それって昔付き合ってて、マスターが振ったけど、今でも好きで忘れられないって言ってた人のこと?」
「あぁ、そうなんだ」
「えぇーーー! 本当にぃ?」
「うん。だから、こんな俺が何十年振りかでもその人に会うことができたんだから、京子ちゃんの想いだって、きっといつか京平に届く日が来るって! それを是非、京子ちゃんには言いたいと思ってたんだ。まさか今日になるとは思ってなかったけどさ」
「そう……、マスター会えたんだ。良かったね! 私もいつか彼に気持ちが届くといいなぁ」
「大丈夫だよ。きっと!」
「うん、ありがとう。それでマスター、その人とはもう一度やり直せそうなの? あっ、その前にその人が結婚してるなら無理か……」
「いや、彼女は幸いなことに独身だったよ。もちろん子供は一人いたけどね」
「えっ、独身だったんだ! 良かったじゃないですか。それならチャンスが?」
「うぅーーん。チャンスというか、何と言うか……」
「うん? どういうこと?」
「しばらくは誰にも内緒だよ。いい?」
 俺は一応そう断って、京子ちゃんに本当のことを話した。もちろん小声で他のみんなに聞こえないように。

「あのさ、俺の好きな人の名前は『優子』って言うんだけど、実は沙耶ちゃんのお母さんも優子って言う名前だったんだ」
「えっ、それって、まさか……、先輩のお母さんが、悟郎さんの……ってこと?」
「あぁ、本当のところ俺も最初は信じられなかったよ。でも、確かめたんだ。間違いないよ。だから、どうしたらいいか……」
「はぁ〜、それでさっきあんなことを聞いたりしてたんだぁ。何か変だなって思ったんだよね。あの時」
「やっばり! あの時目が合って、もしかしたらって俺も思ったよ。アハハハ」
「うふふ、やっぱり私たち仲間だねぇ〜」

「――じゃあ、先輩はまだそのことを知らないのね?」
「そうなんだよ。この前、優子ともそのことで話してね。本当のことを話すかどうするか、今 優子からの返事待ちなんだ」
「そう。でもきっと先輩なら喜んでくれると思うよ。――悟郎さん、優子さんと結婚するの?」
「いや、まだ話はそこまでは行ってないんだ。彼女は前の旦那さんとのことでかなりな精神的ダメージを受けているみたいで、それを克服できるかどうか……かな。俺はもちろん、できれば一緒になりたいと思ってるよ。こうして出会えたこと自体が運命のような気もするし ……」
「そうよ。きっと運命よ! 悟郎さんがそうして幸せになれたら、私も幸せになれそうな気がするわ。きっと幸せになってね。お願い!」
「あぁ、できるだけ努力するよ。約束する」