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茶房 クロッカス その4

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「沙耶〜、マジで言ってるの? ほらっ! マスター、メチャメチャ落ち込んでるよ」
「い、いや、それほどでも……。アハ、アハアハ……」
「……プッ! ごめんなさいマスター! 今のはウソよっ。マスターの反応を見たかったから、ちょっと意地悪しちゃった! ゴメンね〜マスター。エヘヘ」
「そうだよねー。変だと思ったんだ! だって前に言ってたもんね、沙耶。マスターがお父さんだったらいいなって!」
「えぇっ! それ本当かぃ?」
 地獄の底からいきなり天国の特等席に座らせられた気分で俺は聞いた。
「もちろんよ! ねぇ沙耶?」
 薫ちゃんがそう答えてくれたが、俺は沙耶ちゃんの顔を真っ直ぐに見つめていた。
「うふふ、確かにちょっと頼りないとこはあるけど、マスターって男にしては涙もろかったり、人の気持ちをとっても大切にするし、何より結婚したらマイホームパパになりそうだもんね〜!」
「……う、うん。でも、それって褒めてるのかぁ?」
「まぁ、いいじゃん。そんなこと。沙耶のお母さんの彼はマスターじゃぁないんだから」
《えっ、違うよ! 俺だよっ》
 口に出したいのをぐっと飲み込んだ。
 そんな俺を京子ちゃんがじっと見ていた。
「あっ、そう言えば、みんなで一緒に食べようと思ってお祝いのケーキ買っといたんだった! 忘れてたわ。すぐに用意するねっ」
 そう言うと沙耶ちゃんは立ち上がり、奥の調理場へと向かった。
 俺もケーキ用の皿やフォークを準備しようとカウンターの中へ戻った。
 すると京子ちゃんも席を立って、カウンターの俺の目の前に座ると俺をじっと見て、囁くようにそっと言った。
「ねぇ悟郎さん、何かあったでしょう」
「ん? やっぱり京子ちゃんには分かっちゃうか……。アハハ、俺たちは仲間だもんな」
「やっぱり〜。で?」
 京子ちゃんは瞳をキラキラさせて俺の次の言葉を待っている。
「ゴメン。今はちょっと……。後で必ずちゃんと話すよ」
「本当ね、約束よ!」
「あぁ、もちろん」