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茶房 クロッカス その4

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 俺の店の閉店時間に合わせて、仕事を終えた優子が来てくれることになっている。
 俺は、沙耶ちゃんが帰るとそそくさと後片付けを始めた。もし優子が早く来れば、その時点で早仕舞いする心積もりだったからだ。
 しかし今日はできれば飲まずに話したい。どこへ行こうか思案した。

 少しして、優子がカウベルを鳴らして入ってきた。
 カラ〜ン コロ〜ン
「悟郎くーん」
「やぁ、待ってたよ」
「優子、悪かったな、呼び出したりして……」
「うぅん、いいのよ。それより沙耶のことで話って何?」
「あ、ごめん。すぐ片付け終わるから、ちょっと座って待ってて」
「えぇ、わかったわ」 
 そう答えると優子はお気に入りの席に座った。
 俺は急いで片付けを済ますと優子のそばへ行き、
「ごめん、待たせたね。どこで話そうか?」と聞いた。
「どこって、ここでもいいけど?」
「うーん、できればここじゃない方がいいな。店にいるとお客が来るかもしないしさっ」
「そうぉ? じゃあどこへ行きましょうか?」
「……そうだ! 良かったら俺ん家に来ないか? どうせ一人だから誰にも気を遣うことないし……」
「……うーん、悟郎くん家ねぇ……。行ってみたい気はするけど、……どうしようかな〜」
「あっ、もしかしたら、俺が何かすると思ってんのかー?」
「ううん、別にそういう訳じゃあ……」
「大丈夫。君が嫌がるようなことは何もしないから、安心して。俺の生活してる様子も優子には知っていて欲しいんだ」
「そうぉ? 悟郎くんがそう言うならお邪魔してみようかな。うふふ」
「おう、そう来なくっちゃ! アハハ」

 話がまとまると俺たちは早速外へ出て、俺の自転車に二人乗りして自宅へ向かって走った。
 春の日の宵は肌に気持ち良く、優しい花の香りを伴った風がそっと頬を掠めて行き、俺の腰に回した手からは優子の温もりがシャツを透して伝わってくる。

「ねぇ、悟郎くん。考えてみたら私たちって、お互いの家に行ったことって一度もなかったわよねぇ」
「そうなんだよなー。いつも外で待ち合わせしてたし、約束を破ったことはなかったもんなぁ」
「そうね、最後の時以外はねっ」
「またー。そんなに俺をいじめるなよ。十分反省してるんだから……」
「そうね。ふふふ……」
「あはは……」 
 そんな会話を交わしてる内に俺の家に着いた。
「ここだよ」
「へぇー、ここなんだぁ〜」