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てっしゅう
てっしゅう
novelistID. 29231
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「夢の続き」 第九章 由美の再婚

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「作戦そのものは的を得ていたのかも知れないけど、戦い方が悪かったね。無線の暗号を知られてしまっていたこと、ハワイのアメリカ軍基地にある
火薬庫と燃料庫、飛行場やドックなどを徹底的に攻撃しなかったことが心のこりだよ」
「作戦ミスですか?」
「そうとしか考えられない。脅して怖がらせるなんて子供じみている」
「そうじゃないと思いますけど」
「結果論で話しているから何でも言えるんだけど、すぐさまミッドウェイで反撃されただろう?」
「はい、惨敗でしたね」
「見くびっていたんだよ。徹底して攻撃しないと立ち直るチャンスを与えてしまうんだ」
「でも、いずれ資源力と財力に物を言わせて反撃してきますよ」
「ハワイを占領して基地にすれば、アメリカ本土へ攻撃がかけられたんだ。そうすると見せかけて停戦交渉をすれば
応じたかも知れないって考えるのは俺だけかな?」
「ハワイを占領する?補給が大変ですよ」
「停戦交渉のためにするんだからいいんだよ。空母の二三艘引き連れてサンフランシスコに顔を出せば度肝抜かれただろう」
「そんな事が出来たのでしょうか?」
「俺たちは生きるために何でもしてきた。出来ない作戦なんて無いよ」
「もしそうなって、アメリカ軍が本気を出したら、日本は大変なことになっていたと推測しますが、間違っていますか?」
「アメリカ軍は本気で戦っていなかったと考えているのか?」
「ヨーロッパ戦線もありましたからね」
「軽く見られたね」
「軽くじゃなく冷静に見ていたと思います。圧倒的に優位に立つ火器の保有数とマネジメントの優秀さ、最新機器の普及
などが戦局を変えてゆくことを知っていたと思います」
「なるほど、寂しいけどそれが事実だね。焦らなかったことも日本軍とは違っていたのだろう」
「はい、常に冷静、沈着、そして非情ですね」
「う〜ん、負けた」

水野は貴史の考え方に圧倒されてしまった。体験話を聞かせるよりも討論になってしまったように感じた。
戦争をまったく知らない世代にこのように話せる若者がいることをむしろ嬉しく思っていた。

「貴史くん、今日は楽しく語らせてもらったよ。ありがとう。おじいさんの残した言葉の意味が君なりに掴める事を祈っているよ」
「水野さん、ありがとうございました。いい勉強をさせて頂きました。お礼を言います」
「いや、恥ずかしいよ。頑張ってください」

貴史は図書館を後にして帰ろうとしたが、ここのところ洋子と仲良くしていなかったので誘い出そうと電話を掛けた。
「洋子、俺だ。何してる?」
「宿題してた。もう休みも残り少ないから。貴史は済ませたの?」
「いや、少し残っているよ。一緒にやろうか?」
「そうね、私のところに来る?」
「今、豊島図書館なんだ。30分ぐらいかかるかな」
「じゃあ、待ってる。ねえ?晩ご飯食べていってよ」
「おばさんに悪いよ」
「一緒に作るから気にしないで。お母さんも喜ぶから、貴史のこと好きみたいだし・・・」
「イヤミ言ってるの?まだ気にしてるのか?広島でのこと」
「いちゃいちゃしてたじゃない!私が居なかったら、どうなっていたかわからない。違う?」
「お前は病気だな、もう。そこまで嫉妬するのか?」
「貴史がそう思わせるんじゃない!何言ってるの・・・」
「母親だぞ、洋子の。ありえないよそんな風にお前が思うなんて、俺の中では」
「私だって本気でそう思ってはいないのよ。あなたは自然に優しさが誰にでも出るから心配しているの」
「魅力的?って言うことだな」
「うぬぼれているのね。大変!結婚する人が苦労しちゃうわね」
「それって、お前のことだよ。悪いね、苦労かけて」
「もう!知らない・・・」
「俺が着く前に機嫌直せよ。じゃあな」

貴史は洋子の異常な嫉妬深さにあきれてものが言えなかった。母親にまで嫉妬するようではこの先が思いやられる。

「こんばんわ!貴史です」洋子の家に着いた。
「いらっしゃい!待っていたわよ。さあ上がって」由美は中に招き入れた。
「おばさん、お邪魔します」
「洋子、貴史さんよ」
台所で何かしていた洋子は、貴史のほうを振り向いて「待てって」とだけ言った。
居間のソファーに腰掛けて由美が出してくれた麦茶を飲んでいた。

「ねえ?おばさん、修司さんから連絡あったの?」
「ええ、帰ってきて翌日に頂きましたよ」
「早いね。気があるんだ。なんて返事したの?」
「なんてって・・・お礼とか、世間話しただけよ」
「今度逢う約束しなかったの?」
「まだしてないわよ。こちらの都合だけで話せないもの」
「4人でディズニーに行ったら?なあ?洋子いいだろう」
「えっ?ディズニーに。ほんと?行けたら嬉しいけど。貴史も行くの?」
「俺は邪魔になるから遠慮するよ」
「貴史さん、そんなこと言わないで一緒に行きましょうよ」
「おばさん、家族になる話をきちんとしてきたらどう?恭子ちゃんの気持ちとかも聞いてあげないと」
「そうね、貴史さんの言う通りかも知れない」

由美は食事を済ませて、修司に電話を掛けた。
「こんばんわ。今宜しかったですか?」
「由美さん、嬉しいです。大丈夫ですよ。恭子も居ますし」
「早速ですが、洋子と4人でディズニーにでも遊びに行きませんか?」
「いいですね、ちょっと待ってください・・・恭子皆でディズニーへ行こうかって、栗山さんから電話だけどいいかい?」
恭子は絶対に行く、と返事した。
「では、今度の日曜日に参りましょうか?夏休みが終わって空いていると思いますけど」
「解りました。まだ暑いからあなたと洋子さんは日焼けしないように注意して来てくださいね」
「ありがとうございます。楽しみにしております」

貴史が帰ろうとしたときに由美は声をかけた。
「ねえ?良かったら泊まっていって。来週は私たちだけで出かけるから、今日は洋子と一緒に居てやって欲しいの」
「おばさん、本気ですか?」
「ええ、洋子もきっとそうして欲しいって思っているわよ」
「理解あるんですね。俺たちまだ高校生なのに」
「恋愛に年齢は関係ないのよ」
「俺とおばさんとでもですか?」
「何を言うの?変な事聞いて。困らせないで」
「年齢は関係ないって言うから、聞いてみただけです。すみません」
「洋子は人一倍嫉妬やきだから、そんなことも冗談ではすまなくなるわよ。聞こえないから言うけど、伊豆からの帰りに
おっぱい小さいって言ったでしょ?すごく気にしているから、もう言わないでやってね。不満があるわけじゃないでしょ?」
「そんなこと言いましたっけ?だとしたら、もう言いません。気にしてなんかいませんから」
「良かった」

テレビを見ながらいろんな話をして寝る時間が来た。先に風呂を済ませて洋子の部屋で貴史は待っていた。
両親には、おばあちゃんの家に泊まると嘘をついていたが、なんとなく気が引ける心境ではあった。
「お待たせ」洋子が入ってきた。
「久しぶりになるな、洋子とこうして過ごすのは」
「うん、今日はね・・・母に貰ってこなくてもいい日なの」
「どういうこと?」
「鈍いのね・・・安全日だって言うこと」
「絶対に?」
「うん、多分」
「多分はダメだよ」
「じゃあ・・・絶対に大丈夫」
「勝手に決めた?それって」
「違うの!信じて」