舞うが如く 第2章 13~14
土方が沖田を見つめ、
つられたように、良之助が琴を見つめます。
しかし、その瞬間、
すかさず、芹沢が二人の間に割って入りました。
酒臭い息とともに、
独特の、だみ声が響き渡ります。
「待て、待て。
そう、はやるでない、はやるな。
はやまるでないぞ。
本陣や、脇本陣の周囲で、刃物三昧とあっては、
浪士組の名誉にもかかわろう、
ここはひとまずこの芹沢が預かる故、
双方とも気を静めるがよかろう。
待てまて、
後の機会はいくらでもある。
近藤の面目もあろう。
ひとまず待て、沖田。なぁ次郎丸。」
そういいつつ、
鉄扇を振りまわしながら二人を遠ざけます。
土方がいちはやく、沖田連れ出して坂道をくだりはじめました。
良之助が、琴の肩を抱いて人垣を離れます
「どうあっても・・・
沖田と立ち会うつもりか」
「むろんです。」
「ただでは済まぬぞ、お互いに。」
「琴は、自分よりも弱い者には嫁ぎませぬゆえ。」
「それは、
重々承知の上じゃ。
なれど、上洛の道を行く今はその時にはあるまい、
先日は近藤に邪魔をされたとはいえ、
いつまでも、
あえて沖田一人にこだわることもなかろう。」
「いえ、
どうあっても決着をつけたいのです、
なにがあろうとも、
沖田さんの腕前を確かめたいと思いまする。」
「頑固で有るな、
なにゆえ、
それほど沖田にこだわる?」
「琴の血が
騒ぎまするゆえ。」
「ほほう、
それは沖田が気に入ったということか?。」
「それは・・・」
はははと、
良之助が琴の背中を叩きます
作品名:舞うが如く 第2章 13~14 作家名:落合順平