舞うが如く 第2章 13~14
(14)上洛前夜
草津宿(くさつじゅく)は、
東海道五十三次では52番目の宿場町にあたり、
木曽路をくだってきた中山道と、ここで合流します。
東海道の江戸方からは、草津川を越えて、
堤防沿いに進むと、東横町・西横町と続いて
やがて中山道との合流点に至ります。
ここを左折すると、
一町目から六町目まで続く宿場通りに入ります
中山道からは、
草津川のトンネルを抜けて追分へと至りますが、
このトンネルができたのは1886年(明治19年)のことです。
それ以前は、町の高みを流れるこの川を渡って
旅人たちは、草津宿へと下っていきました。
琵琶湖を真近に望んで
いよいよ京都に到着と言う、
その前日になりました。
琴の涼しい目が、沖田を振り返ります。
懐手のままの沖田が、
それを真正面から受け止めました。
高さが14尺余り(4,5m)ある、
常夜灯の「追分道標」を過ぎたばかりの坂道でした。
道の土手下には、一反(300坪)ほどの草原が広がり、
それを取り囲むように杉の大木もそびえています。
ゆるやかに続く長い下り坂の先からは、
もう賑やかな物音が聞こえており、
宿場町の青い屋根も見え隠れしていました。
「望みとあらば、ここでもよいが、
どういたす、
真剣でもよいのか?」
「もとより、望むところです。」
一瞬のことに、周囲が色めきました。
作品名:舞うが如く 第2章 13~14 作家名:落合順平