舞うが如く 第1章 13~15
(14)房吉騒動・その2
こと、ここにいたってもはや猶予は無しとみて
房吉も、小刀を抜いて応戦をいたします。
玄関先では手狭なために、庭先に飛び出てその態勢を構えます。
が、卑怯にも数人の者が
庭先の土蔵の上から、かねてより用意しておいた
大小の石のつぶてを、房吉めがけて投げつけてまいります
これを避けて傍らの生け垣に身を寄せると、その隙間から
えいやっとばかりに竹槍が、気合とともに突き出されてきました。
ひらりと身をかわせば、また次の隙間からも、
次の竹槍が突き出される始末です。
事の重大性を察知した房吉が、
与吉と寿吉の二人に向かって、「早くこの場を立ち去れ」と命令します。
高弟の二人は、師とともにこの運命を共にすると
言い張りますが、房吉が其れを遮ります。
「我らが三人とも死なば、
伊乃吉らの企み通り、わが法神流が途絶えるのは必然である。
二人とも早く落ちのびよ」と重ねて厳命をくだします。
斬りかかってきた数人のものを、
左右になぎ払って退路を切り開いた房吉が、早く逃げろと
二人に向かってさらに声を荒らげます。
後ろ髪を引かれる思いでその場を離れた二人は、街道にでると
右と左にそれぞれ別れ、互いの道場にむかって
加勢をもとめてひた走ります。
作品名:舞うが如く 第1章 13~15 作家名:落合順平