舞うが如く 第1章 5~7
二十歳となった房吉を、
法神が自らの庵に呼び寄せました。
これより免許皆伝のための試練を与えると宣言し、
「一本の技を身につけるためには、万本の打ちこみを要する」
と諭します。
さらに法神流の奥義のすべてを授けるために
これより三年と三カ月の間、山中にこもって修練に励めと問われます。
房吉も、もとより承知の上とこれを受けて立ち、
両親に暇を願いでたのちに、
法神とともに赤城の山中に踏み込みます
それから三年と三か月の間、この子弟の二人は、
剣と柔術の鍛錬にひたすら励みます。
天狗の剣といわれた法神が80歳とも、
90歳とも言われた時のことでした。
みずからの後継者として
房吉にすべてを託した修業の後、
一段とたくましさを増した房吉は、師匠との約束通り
無二の親友である栄蔵を伴って、
さらに三年間の武者修行の旅にと出ます。
終生、無敗の剣士としてその名を知られた
房吉の深山法神流の天狗剣法は、
こうして誕生したのです。
作品名:舞うが如く 第1章 5~7 作家名:落合順平