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舞うが如く 第1章 5~7

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舞うが如く 第一章
(5)神童・房吉(後)

 同村に、須田栄蔵という
房吉と同じ歳の若者がおりました。
房吉とは生家も近く、幼いころからの顔馴染です。
同じく祖父の道場に籍を置く同期の練習生ですが、
剣術よりも、読み書きを得意とする若者です。

 剣の腕は、はるかに房吉には及ばないものの、
ある日ふと思い立ち、願をかけます。
深山の庵に籠り、一心に月に祈り身を清めたまま、ひと月近くを、
ひたすら瞑想のままに過ごします

 満願となったその夜に、房吉を呼び出し、
酒食でもてなした後、立会いをもとめ試合にとおよびました。

 双方、しばし打ちあいますが
不思議と房吉の竹刀が、空を切り栄蔵には届きません。
届きそうで届かない間合いに、じれた房吉が
強引に、前に一歩を踏みこみました。

 その刹那、力を溜めていた栄蔵の竹刀が
鋭く伸びてきて、房吉の面を綺麗に打ち抜け、
見事な一撃が房吉の面上をとらえました。


 房吉は驚き、
竹刀を垂れて、友の挑戦を止めました。


 見事な一撃に、房吉は友の栄蔵を称賛します。
再び酒を酌み交わしながら、
この時より二人は終生を共に過ごすことを誓い合います。

 友の戒めに発奮した房吉が、
生来の直向(ひたむき)きに加えて、
さらに過酷な修練と鍛錬に明け暮れるようになりました。
その甲斐もあって赤城の神童が心身ともに開花して、
その腕前は、近在では敵なしのとの評判にまでいたります。