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舞うが如く 第1章 1~4

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 「なかなかの打ち込みで有る。
 だがまだ、気持ちが急ぎすぎておるのう・・・
 はやりすぎじゃ。」

 そう静かに言い残すと、縁側にどぶろくの徳利を置きます。
その場でトンと地面を蹴ると、高さ6尺あまりの板塀を
軽々と越えて行ってしまいます。
いつもながらの、天狗のような身のこなしです
その老剣士がヒョイと再び、板塀の上に現れました。

 「これは、わしとしたことが失礼をいたした。
 旨いどぶろくを馳走になった礼に、ひとつ奥義をお見せしょう、
 剣には常に強さは要るが、
 力づくしだけでは、時と場合で切れないものもある。
 断ち切るとは、こういう意味じゃ。」

 そういうと、さきほどまで
口に運んでいた盃を、空中高くに放りあげました。
腰にした太刀に手をかけるやいなや、
気合とともに身を躍らせて
その場の空気を十文字に切り裂きます、
そのままとんと軽やかに、板塀に着地しました。


 「壊れてしまっては、
 もう、使い物にならぬであろう。
 次回よりは、これを使うがよい」


 そう言うと、板塀の上に、
懐から取り出した土器の盃を置きます。
ほどなく先ほどの盃が、静かに地面に落ちてまいりました。
着地した瞬間に、綺麗に縦2つに割れてしまいます・・・
それが転がりかけた矢先に、さらに
上下の2段に割れました。

 板塀の上に、
もう老剣士の姿はありません。