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ねえ、言ってよ

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「だって○(マル)が付いてる」
「あれは、初の給料日。結婚記念日は・・・来月でしょ」
「あ・・・」
「でも、日にちは合ってる」
「じゃあ、戻して戻して。来月やりなおすよ」
「いやよ。もう遅い」
「はあー。せっかくばれないように、しゃべるの我慢してきたのに。仁実が悪いんだぞ」
「どうして?」
「あんな○(マル)を書いておくから。可笑しいなーって思ったんだ。来月だと思っていたのに俺が記憶間違いしたかと、焦ったよ」
「ごめんなさい。ってどうして私が謝るのかな」
「じゃあ、とりあえずはめてごらんよ」
仁実はケースを開けると、10個のダイヤモンドがプラチナにはまっている指環がはいっていた。
「店の人が『レール止めされていて輝きが綺麗ですよ』って勧めてくれて。俺も気に入ったんだけど、どう?」
「綺麗。でもはまるかな」
仁実は、左手の薬指にはめようとしたが、ケースに戻した。
「やっぱり来月にする。一ヶ月で痩せる!サイズなんて知らないでしょ」
「結婚指環を店に持っていった」
「あ、あなたなの?私外して置きっぱなしにして探したけど、その日無くて、失くしたと思ったら、また置いてあって、可笑しいなとは思ったの。その時ね」
「そうだったかな・・・」
「でも、それなら絶対無理ね。これ、今きつくて外れないもの」
「ほら、せっかくだからはめてごらん」
正敏は、やや強引に妻の手を掴むと、指環を指に通した。
「絶対駄目!もう!!あ、あれ?」
その指環は、仁実の指にちょうど良くはまった。
「おーミラクル。さすが店の人のいうことは凄い」
「・・・」
「きっと、ずっと家事をされてきたんなら指の節がしっかりされてるでしょうからって、ひとサイズ大き目を選んでくれたんだ」
「そう・・・ぴったり。ありがとう」
「いえいえ」
「・・・言って」
「似合ってるよ」
「ううん。ねえ、言ってよ」
正敏は、口を一文字にぎゅっと結んだ後、仁実の手を握った。

「愛してるよ」
 
作品名:ねえ、言ってよ 作家名:甜茶