小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

ねえ、言ってよ

INDEX|7ページ/10ページ|

次のページ前のページ
 


翌週の月曜日、仁実は初出勤した。
夫にこれという言葉も貰えず、息子も「ふーん」と他人事。
娘だけは「お母さん、お勤めするの。頑張ってね」と言ってくれた。
仕事は、面白いとも難しいともまだわからなかったが、結婚以来、初めての社会復帰、
気持ちは高鳴った。
週4日。
毎日、覚えることばかり。十数年のブランクは、扱う機器すらわからなくなっていた。
パソコンの扱いと もう昔といえるOL時代を思い出しながら、会社のシステムをなんとか扱えるようになってきた。
同じ時間、同じ場所なのに、毎日が違う。
以前よりも、家事も忙しくなったが楽しく感じる。
むやみに話しかけてうるさがられた子どもとも楽に話せるようになった気がした。
そして、初めてのお給料が振り込まれた。
『72000円』から諸費を引かれた初給料。明細書の金額を見て微笑む。
(自分で稼いだんだ)
家族に何か買いたい。でも何がいいのかわからない。
仁実は銀行の帰りに洋菓子店でケーキを買った。
いつものみんなの好みを頭に浮かべながら、4個のケーキを選んだ。
誰の誕生日でもない。でもとても嬉しかった。
家族の帰りがいつもより待ち遠しかった。

作品名:ねえ、言ってよ 作家名:甜茶