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ねえ、言ってよ

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2日後、昼近くに電話が鳴った。
『明日面接にいらしてください』との連絡だった。
(履歴書選考は良かったのね)
途端に、緊張したが、(もう少しもう少し)と自分を励ました。
翌日の面接は、緊張はしたものの、和やかに話をすることができた。
先日の息子の面談よりも気持ちが楽だった。
(思いつきと駄目もと・・・)
そして、2日後。
仕事をすることが決まった。
夫にどう伝えようか仁実は、昼過ぎから考えた。
少し、料理を豪華にしてみようか。お寿司でも作ってみようか。
(「私の就職祝いよ」って言ってみようかな)
結局、普段と変わらず、子どもの好きなメニューになった。
食事のとき、その料理を見て、息子がひと言。
「なんでハンバーグに旗が立ってるんだ?」
娘は、ただニコニコと食べていた。
少し帰りが遅い夫のハンバーグには、やはり旗を立てることはできなかった。
「食べているときだけど、話があるの」
「なに?」
「あのね、私パートに出ようと思うの」
「どうして?」
「どうしてって、理由は考えてなかった・・・あ、でももう採用してもらえたの」
正敏は、ハンバーグをフォークに突き刺したまま、仁実を見た。
「そう」
「それだけ?」
「何処?」
「あの角の事業所。事務とか配送とかするの」
「近いね」
「時間も距離も、生活には支障ないと思うの。いい?」
「決めたんだろ」
「そうだけど」
正敏は、残りのハンバーグも口にほおり込み、ご飯も食べ終えた。
お茶を啜り、椅子の背に凭れ妻を見た。
「ごちそうさま」
正敏は、席を立ち、部屋へと行ってしまった。

作品名:ねえ、言ってよ 作家名:甜茶