ねえ、言ってよ
「今度の面談は、やっぱり進学の話が出るのかな」
仁実は息子に話しかける。
「たぶん」
「どこか行きたい目標の学校はあるの?」
「まだ分からん。入れる頭かどうかも分からん」
「そうなの?まあ、お母さん的には、楽しめるところだといいと思うけど、先生に聞いてみないとね」
「聞くって、勉強のない学校ありませんか?って」
熱いグラタンを口の前で冷ましていた妹が笑った。
「あるの?」
「あるわけないだろ」と息子は切り返す。
「それはちょっとお母さんでも聞けないわ」
「まあ、適当に話聞いて来てよ。ごちそうさま」
息子は部屋へと戻っていった。
「美味しかったー。ごちそうさま。食器どうする?」
「ああ、そのままでいい。あとから片付けるから」
妹はリビングのテレビでお笑い芸人のバラエティー番組をつけた。
以前ならもう一時間前のアニメをかじりついて見ていたのだが、(かわったんだな)と成長を嬉しく感じた。
それにしても、夫はどうしたのだろうと、テーブルの上の食器を流し台に片付けながら
部屋の方を見た。
濡れた手をタオルで拭い、様子を見に行こうと廊下まで来た時、ドアが開いた。
「大丈夫?ご飯食べる?」
「ああ」
「じゃあ、温め直すわね」
「そのままでいい」
正敏は、腰掛けると前にあるグラタンを一気に食べ終えた。
「寝る」
「お風呂は?」
「朝」
また、部屋へと戻って行ってしまった。