それぞれのクリスマス・イヴ
少女は、お母さんへのプレゼントを一生懸命考えたが、何がいいのかわからなかったので、父親にきいてみた。
「お母さんのプレゼント何がいいかなあ」
父親は、「マンガとCDは頼まれた物揃えたけどね、う~ん、喜ぶものは食べ物なんだよね」と言って父親が少し悲しそうな顔で笑った。
「でもね、秘密のもの持って行こうかな」
父親が、少し悪戯っぽい顔になって言った。
「何、秘密のものって」
「教えられないから秘密のものっていうの」
「ちぇっ」少女が不満そうに言う。
「わたしも、ひみつのもの考える」
少女は真剣な顔になって、自分の学習机に座った。
◇ ◇ ◇
私はそんないきさつを知った。
そして父親が下げた袋には、気分を変えてあげたいのだろう少し派手めの妻のパジャマと、マンガ、小説、CDで膨らんでいる。ビニール袋に入ったタッパーもある。その中身は美味しそうなイチゴが5粒ほど入っている。今回だけと一番高いものを選んで買ったのだ。内緒でそうっと食べるのもおいしいだろうと思って。
少女のポシェットには、稚拙で味のあるサンタクロースを書いたカードと、自分の小さな靴下が入っている。その中には父親をまねて秘密のもの……小さなミカンが1個入っていた。
◇ ◇ ◇
作品名:それぞれのクリスマス・イヴ 作家名:伊達梁川