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それぞれのクリスマス・イヴ

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「うわ~寒い」少女が声をあげた。
外に出ると、顔も耳も痛いような寒さだった。

「ほら、帽子忘れているよ」と父親が帽子を被せる。


バス停まで歩く道で「お母さん、クリスマスは病院だなあ」と父が言った。

少女は少し間を置いてから「もう、幼稚園でやったよ」と言った。

「明日がクリスマス・イヴなんだけど、お母さんに何かプレゼントしようか」
父が明るい声でそう言ったので、少女が「うん、何がいいかなあ」と明るい声で言った。

「食べるものはダメなんだよね。病院で出たものしか食べられないんだ」
「えー、ケーキもだめなの」

「うん、でも行事食といって、ケーキのようなもの出るかもしれないよ」
「ぎょうじしょく」と少女がくりかえす。そして暗い夜空を見上げる。

「あ、みかづき」
「あ、ずいぶんはっきり見えるなあ」

「お母さん、見てるかなあ」
「いや、テレビ見てるんじゃないかな」

「そうだね、テレビ好きだもんね」

やがて到着したバスに乗り二人は家路につく。