それぞれのクリスマス・イヴ
そして私は、あの人のところに向かっている。あの人、私が精神感応できないたった一人の男性。
あの日、あのひとの姿と話し声を聞いて私は言葉で説明できない感情につつまれた。そして、理由を知りたくて、バリヤーを解いてあの人の脳に入りこもうとしたけれど、出来なかった。
私があの人を見る目と、感応できなくて少し慌てた私の姿を見て、あの人が私に興味を持ってくれた。変な話だけど、私より先にあの人が私の恋愛感情を察していたようだ。私は、他人の恋愛感情はいやという程見てきたのに。
あの人に会う度に私の能力は衰えて行くのを感じる。それはいいことかも知れない。こんな忌々しい能力は無い方がいい。
また、駅が近づいてきて停まった。色々な人が降り、乗ってくる。
私は、あの人のことを思う。う~んと好きになって、こんな能力を無くしてしまおう。だって、まだ20代半ばの私なんだから。
おしまい
作品名:それぞれのクリスマス・イヴ 作家名:伊達梁川