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島原あゆむ
島原あゆむ
novelistID. 27645
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【第十回・弐】おふくろさんよ

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「私ね…京助が泣いたところってあんまり見たことないのよ;」
「え…?」
母ハルミの言葉に緊那羅が京助を見る
「その様子じゃ緊ちゃんは見たことあるのね」
母ハルミが言うと緊那羅が躊躇いながらも一回頷いた
「自分がしっかりしなくちゃ、お兄ちゃんなんだから泣いちゃダメなんだってきっと今でも思ってるんだと思うわ…昔のまんま」
母ハルミが京助の母を軽く突付いたが一向に京助には起きる様子がない
「昔の…まんま…」
緊那羅がボソッと言う
「…馬鹿だけど…いい子に育ってくれてまぁ…」
母ハルミが嬉しそうに言った
「ねぇ…緊ちゃん…男の子にこんなこと言うのはおかしいと思うけど聞いて頂戴」
母ハルミが緊那羅を見た
「母になるって凄く幸せなの」
「母…」
「そして母でい続けることはもっと幸せでね」
間に緊那羅の呟きを挟んで母ハルミが話す
「京助と悠ちゃんがいる限り私は母でそれはとっても嬉しいことでね…」
ストーブの灯りだけの部屋の壁にユラユラと二つの影が揺れる
「守りたいの」
母ハルミが静かに言った言葉に緊那羅が顔を上げる
「ハルミ…ママさん…」
「時だかなんだか知らないけど…幸せを守りたいって思うのは私だけじゃないと思うわ」
母ハルミが言う
「私の幸せは京助と悠ちゃんと…そして」
母ハルミの手が緊那羅の頭に伸びた
「みんながいること」
緊那羅の頭を撫でながら母ハルミが微笑んだ
「誰が欠けても幸せになれないわ」
「私も…っ」
緊那羅が声を上げた
「私も…守りたいっちゃ…幸せ…」
少し驚いた顔をした母ハルミがまた微笑んだ
「…京助は私が守ります」
緊那羅がまっすぐ母ハルミを見た
「でも無理はしないのよ?」
母ハルミがあっけらかんと言った
「え…っ;」
「そんな力まないで」
思わず立ち膝になっていた緊那羅にカラカラと笑いながら母ハルミが言う
「ありがとうね緊ちゃん」
少し照れながら座りなおした緊那羅に母ハルミが言った
「竜之助はみんな知ってたのかしら」
ふと母ハルミが言った言葉に緊那羅が顔を上げた
「あの…えっと…たぶんだっちゃけど…」
緊那羅がしどろもどろしながら言う
「やっぱり…知ってたのね…」
母ハルミが俯いた
「ハルミママさん…」

「っ…あんのたくらんけ-----------ッ!!!」
俯いた母ハルミの肩に手を置こうとした緊那羅がいきなり叫んだ母ハルミに目を丸くして手を引っ込めた
外でドササッと屋根から雪が落ちる音が聞こえた
「はー!! もう!! 腹立つったらありゃしないッ!! 目玉焼きは完熟じゃないと食べいないとかトイレの水を流さないとかのレベルじゃないわ!! っとにもう!!」
「は…るみママさん?;」
怒鳴り散らす母ハルミを緊那羅がおろおろしながら見る
「京助のオシメ取り替えてっていっても取り替えたままでズボンはかせないし…ッ!!」
「…あの…;」
「あーもう! 生きてるんなら一回くらい顔出しなさいよ!! ねぇ!?」
「ハイッ!!;」
眉を吊り上げて母ハルミが言うと緊那羅が背筋を伸ばして返事をした
「そして説明しなさいってのよ!! どうして生きてるのか! 」
なおも母ハルミが声を上げる
「っとにッ!!」