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「寝ちゃった」
慧喜がやんわり笑顔を向けた先には自分の膝の上で寝息を立てている悠助
「悠助ね頭撫でるとすぐ寝るんだ」
慧喜が嬉しそうに言った
「安心するんだっちゃね」
緊那羅が煙突の空調を調節しながら眠る悠助を見て笑った
「緊那羅」
慧喜が緊那羅を呼んだ
「なんだっちゃ?」
緊那羅が首をかしげた
「…難しいよね」
慧喜が真顔で言った
「へ?；」
それに緊那羅が疑問系の返事を返す
「義兄様甘えるのヘタだから」
「あ…えっと；」
慧喜が俯いて悠助の髪を撫でた
「悠助と正反対…義兄様って」
モゾモゾと悠助が動く
「…だから緊那羅が必要なんだよ義兄様には」
慧喜が顔を上げた
「でも…京助には沢山友達とか…私の他にも誰か…」
「馬っ鹿じゃない?」
緊那羅の言葉を慧喜が切り捨てた
「緊那羅は一人しかいないんじゃない俺でも悠助でも緊那羅にはなれないんだよ? なんでわからないのさ」
慧喜が強く言った
「どうして置いていったんだよ義兄様を」
緊那羅を慧喜が睨む
「置いていかれる辛さ…知らないんだろ…ッ…」
慧喜の言葉が詰まった
「どんなに心細いか辛いか悲しいか苦しいか…っ」
俯いた慧喜の言葉に嗚咽が混ざり始める
「慧喜…」
緊那羅が慧喜の顔を覗き込もうと膝をついた
「俺は…もう嫌だ…」
慧喜が鼻を啜りながらいった
悠助を起こさないためなのか声を押し殺して涙を流す慧喜
「慧喜…」
そんな慧喜を緊那羅がおろおろしながらただ見ている

「緊那羅…俺はね…捨てられたんだ…宝珠に選ばれた瞬間に」
慧喜の肩に伸ばしかけていた手を緊那羅が止めた
「また来る…俺が聞いた最後の親の言葉」
慧喜が小さく言った
「でも来なかった…俺はずっと待っていた…」
鼻を啜った慧喜が赤い目をして顔を上げた
「来てくれたのは…お二方だった…」
「矜羯羅と…制多迦…?」
緊那羅が言うと慧喜が頷いた
「初めは恐れ多くてロクに話もしなくて…でもお二方はずっと傍にいてくれて…」
慧喜が微かながら微笑んだ
「お二方はね…俺の中で失礼かもしれないけど『親』なんだ…俺にとっての」
悠助の頭を撫でて慧喜が言う
「だから…お二方が悠助や義兄様に構うのが俺は嫌で…あんなことしたんだよ…」
慧喜が言うあんなこと
悠助と京助…【時】の鍵となる二人を消そうとしたこと