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島原あゆむ
島原あゆむ
novelistID. 27645
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【第十回・弐】おふくろさんよ

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「初めて竜之助を姿を見たのは私が小学生の時」
カレーの盛られた皿にスプーンをさして母ハルミが話し始めた
「小学六年生のとき…の夏休みだったかしら」
ウズラを口に運びながら母ハルミが言う
「ずんぶ昔だなぁ;」
京助がカレーを口に運びながら言った
「たまたま友達がラジオ体操休んでね。私が一人で待ってた時に変な格好した人が黙って私を見ててね…それが竜之助」
「変…」
京助が緊那羅を見た
「なんだっちゃ;」
緊那羅がスプーンをくわえたまま京助を見返した
「お父さん変なの?」
風呂から上がった悠助が言った
「竜は変わってたって聞いたことある」
同じく風呂上りの慧喜が悠助の頭をタオルで拭きながら言った
「しばらく私の竜之助も動かないまま黙って見ていて…友達が来て振り向いたらもうソコにはいなくてね」
母ハルミが言う
「そして次にあったのが中学一年のやっぱり夏休みでね…その時初めて声をかけられたの」
「ほ~…なんて?」
京助が聞いた
「いい天気だね」
「…いつの時代のナンパだ;」
京助が肩を落とした
「で…? なんて返したんだ?」
京助が聞く
「たしか…昼から雨だったかしら? そしたら困ったなーって言うもんだから…家に来る? っていったの」
母ハルミが言った
「で…なんか知らないけどそれからずっといたのよ」
「は?;」
母ハルミの言葉に京助を緊那羅が声を揃え慧喜と悠助はきょとんとした顔で母ハルミを見た
「住み着いてたわけじゃないんだけど…気づいたら境内とか木の上とか…私の隣とかにいつもいてね…なじんでたの」
母ハルミが笑った
「私の父さん…ジジちゃんとババちゃんが高校の時にいなくなっても竜之助だけは側にいてね」
左手を撫でながら母ハルミが言う
「奥の部屋にしまってあったあの布と一緒に私を抱きしめてくれたの」
母ハルミが幸せそうに笑った
「で…ゴールイン?」
京助が聞く
「そ。そしてアンタが生まれて悠ちゃんが生まれたの」
話し終えた母ハルミが京助と悠助を見て頷いた
「…なんか」
京助がボソッと言った
「…まともに父さんの事…初めて聞いた」
「そりゃそうでしょ初めて話したわよ竜之介のことなんて」
京助が言うと母ハルミが即答した
「俺…七年…くらいは一緒にいたんだよな?」
京助が母ハルミに聞く
「そうね…悠ちゃんが生まれて…そんなもんかしら」
母ハルミが答える
「でも…私も変なのよね…私の中では…竜之助はしんでるの…確かに…でも生きてるの…よね?」
母ハルミが緊那羅を見た
「えっ; …あ…そう迦楼羅が言ってたっちゃし…」
いきなり話を振られた緊那羅が焦りながら答えた
「どうしてこんなに記憶があやふやなのかしらね」
母ハルミが溜息をついた
「…俺どうして父さんの記憶ないんだ?」
「私に聞かれても;」
京助が緊那羅を見て聞くと緊那羅が苦笑いを浮かべた