アイラブ桐生 第三章
そろそろ横切る道路を探そうか・・・
そう思い始めて、適当な道路を物色しはじめた矢先に、
レイコが前方に何かを見つけて、指をさしました。
海の上に、丸太で組まれた櫓(やぐら)が立っています。
同じような櫓が、海岸近くを点々とならんでいました。
「俺たちの盆踊りは、道路の真ん中で
やぐらを組んで八木節をやるが、
此処の連中は、海の上で盆踊りをするのかなぁ・・。」
「なぁに馬鹿いってんの。
そんなはずはないわよ、河童じゃあるまいし。」
櫓は全体的に、貧弱な造りでした。
丈夫そうな丸太で組まれてはいたものの、足元となる部分には、
簡単に板を置いただけの構造でした。
さらに日差し除けの屋根として、頭上にはすだれが、
チョコンと取りつけられているだけの
簡易すぎる代物です。
「なんなんだろうね・・一体。」
過ぎ去る櫓を、後ろ向きに
見送りながらレイコが小首をかしげました。
作品名:アイラブ桐生 第三章 作家名:落合順平