アイラブ桐生 第三章
整えられた朝食を済ませ、何度もお礼を言ってから、
教えられた通りに、西海岸へと向かう山道へと向かいました。
子供たちは元気に道路まで飛び出してきて、車が見えなくなるまで
精一杯に手を振っていつまでも見送ってくれました。
小供たちが涙も見せずに、レイコと笑顔で別れてくれたことに、
内心ほっとしたと素直に告げると・・
「甘いなぁ、民宿で育ったこどもたちだよ。
親しくなるのもいち早いけど、別れることにも慣れてるの。
別れたら、みんな別の人ょ」
なるほど、女は、別れたら別の人か、
そうだよな・・・よくわかりましたと納得してしまいました。
小1時間ほどの山道を走り終えると
教えられた通りに、大きく横たわる日本海が見えてきました。
今度は、はるか大陸にまで続く外洋で、黒々とした海面では所々で、
白いうさぎと呼ばれる三角の波が光っています。
輪島市の看板を過ぎ、
小さな橋をひとつ渡りさらに標識通りに進んで行くと、
海岸沿いに造られた、朝市用の駐車場に着きました。
かなりの広さがあるのにもかかわらず、朝早いせいか意外なことに、
数台の車が停まっているだけで、あとは閑散としています。
そこから先はいつものように、
なんとかなるだろうと、適当に見当を付けて狭い露地を歩いていたら、
突然ひらけて、朝市通りの真ん中あたりに飛び出してしまいました。
それほど広くない道の両脇には、それこそ隙間なく
野菜と魚を中心にしたいくつもの小さな露店がならんでいました。
しかしそのほとんどが、無造作に商品を並べただけというありさまで、
単に地面を占有しているだけの、すこぶる素朴な情景です。
作品名:アイラブ桐生 第三章 作家名:落合順平