アイラブ桐生 第二章
小走りからようやく立ち止まり、
一度後ろを振り返ってから、やがてあきらめたように、
ポンと下駄を投げ捨てて、両方のこぶしで目がしらをぬぐいました。
手のひらで両方の足の裏を叩いてから、フンと小鼻を鳴らした後、
転んでいる下駄を乱暴につっかけました。
一回だけ、肩で大きな息を吐き出してから、
あらためて両方の目尻をぬぐい、やがてトボトボと歩道を歩きはじめました。
こちらとすれ違ったというのに、
レイコには、まったく気がつく様子がありません。
「?・・・」
いつものレイコとなにが違っていたのか
すれ違ったその瞬間に、そこで初めて気がつきました。
髪が短くなっていました。
へぇ~ショートにしたんだ・・レイコが。
長い髪が大好きで、よく手入れをしていたレイコとはまるで、別人で
ある意味、新鮮にも見えたレイコでした。
こちらから声をかけようとしたら、
今度は、崩れるようにして、その場に座りこんでしまいました。
どうした? なにが有ったんだ、レイコ。
作品名:アイラブ桐生 第二章 作家名:落合順平