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アイラブ桐生 第二章

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 夕方からは
市街地の中心を貫くこのを「本町通り」は、
即席の、祭りのメイン会場に早変わりをします。
町内ごとに、高さが2階建以上にもなる八木節の櫓(やぐら)を
通行止めとなった本町通りのど真ん中へ引き出します。

 待機していた音頭取りと囃子手たちが、
その壇上へと登り始めると、その周囲には気の早い踊り手たちが、
早くも、幾重もの輪になって櫓を取り囲みます。
いずれもが準備をすでに整えて、「早くはじめろ」と
一様に、口々に囃したてました。
 こうして祭り本番の桐生市では、北から南までの
すべてにわたって、いかにも細長い八木節祭りの
競演会場が出来上がります。


 時刻が7時を少し回りました。
駅から、本町通りへ向かうアーケードの下を歩いていた時でした。
人の流れに逆らいながら、見覚えのある女性がひとり、
勢いよく浴衣姿で走って来るのが見えました。

 レイコです。

 こいつがあらわれるのは、決まっていつも突然です。
赤い下駄を片方の手に持って、はだける浴衣の前をもう一方の手で押さえながら
涙顔で、裸足のままの小走りでした。


 なにやら様子が、いつもとは大違いです。


作品名:アイラブ桐生 第二章 作家名:落合順平