アイラブ桐生 第一章
ようやく会場に到着した時は、
すでに集会は終了していて、デモ隊がその隊列を整えながら
出発の合図を待っているところでした。
全体集会の会場となった公園は、まだ余韻を引いてどよめいていました。
前回の時よりも参加者が増え、見た目にも倍ちかい人数に
デモ隊が膨れ上がっていました。
のぼり旗が林立をして、ゼッケンや横断幕もはるかに数が増えています。
「安保」の自動延長日を直前にして、今度こそ廃棄という
わずかな可能性も生まれてきたために、
ようやく反対の大合唱が大きくなり始めたという、
実感がありました。
とりあえずは、地元勢と合流しなければなりません。
群馬・栃木・茨城の3県連合のはずなので、
たぶん中団あたりにいるはずと目星をつけて探していたら
すぐに見つけることができました。
それはかつて、「あかつき特別行動隊」と呼ばれ、
少数ながらも、極左の全学連たちとも互角にわたりあったという、
勇猛の名残を持つ、学生たちのオレンジ・カラーの一団でした。
街頭宣伝活動の開始の時から身につけてきた、
オレンジ色のヤッケは人ごみの中でも、やはり特別に目立ちました。
手を振りながら人ごみを懸け分けて行くと、馴染みの学生が
向こうから 「よおっ!」とひと声かけながら近寄ってきました。
デモ行進で必需品の、鉢巻きとゼッケン、腕章が
ヤッケとともに、乱暴に手渡されました。
作品名:アイラブ桐生 第一章 作家名:落合順平