アイラブ桐生 第一章
うん、と振り返り、仲間を探すと・・
もう階段にも、降り切った下の空間にも、誰一人として残っていません。
みんな帰ったのかと思いながら、ポケットから煙草を取り出すと、
間髪いれず、瞬時にレイコの指がのびてきました。
「未成年に煙草は、ダメ!。」
ひょいとかすめ取り、ポンと屑籠へ捨ててしまいました。
「酒はいいのかよ」
「ばれなけりゃ、だいじょうぶ!」
こいつは、いつもこういう奴でした。
つかみどころのないことを平気で口にするし、
なぜかいつでも決まって、上からの目線で私にものを言います。
「明日の朝は、早いぜ。」
「寝ずに行くもの。」
「大丈夫かよ・・・」
「電車で、寝られるもの・・・」
などと会話しつつ、すでに足はいつもの焼鳥屋へと向いていました。
明日の朝、本当に大丈夫かなと思いながらも、
先輩の両親が営業している、縄のれんを目指して
レイコと肩を並べて歩きはじめました。
作品名:アイラブ桐生 第一章 作家名:落合順平