アイラブ桐生 第一章
「あっ」、と気が付いて
名前を言おうとしたときに、
「私も連れてってよ」と、階段を立ち塞いでしまいました。
暗くなり始めた帳(とばり)のなかで、もう一度、しっかりとその顔を確認しました。
レイコでした。
2年ぶりに見る顔は化粧をしていて、
他人のような、大人の顔にも見えました。
「珍しいところで逢うね」
「なぁに言ってんの。
この間居たでしょう、顔見たわよ」
「どこで?」
「○○サークルの、歌声喫茶。」
それは、月に一度だけひらかれる
サークルで、主に学生たちが集まる歌声喫茶のことでした。
そこへは確かに行きましたが、レイコの顔を見た記憶はまったくありません。
「あいかわらず、なんだから、もう。
せっかく会ったんだもの、呑みに行きましょう。」
「まだ、未成年だろ・・(それは、オレも同じだが。)」
「どうせ、行くんでしょ?」
作品名:アイラブ桐生 第一章 作家名:落合順平