アイラブ桐生 第一章
その日は、2階で密談でした。
翌日の、国会デモ行進の打ちあわせです。
集結地まで行く方法と細かい時間の確認、さらに途中の車内での注意事項、
不測の事態に備えての対処の仕方と、帰り道での諸注意・・等々。
要は、グループごとでの(前夜の)決起集会でした。
ふと視線を感じて振り返えってみると
同級生で、見覚えのあるような女の子が一人、じっとこちらを見ていました。
「さて、誰だろう。」
その時は、まったく思い出せませんでした。
女子学生風のグループで、話も慨に終わったらしく、
一斉に立ちあがるとあっというまに散りじりになってしまいました。
呼び止める暇も有りません。
こちらのほうでも話が終わり、軽く呑みに出ようということで
階段を降り始めた時でした。
「しばらく。」
と女性が、私の前に立ちました。
作品名:アイラブ桐生 第一章 作家名:落合順平